sekaiwoyakusu’s blog

世界の"おもしろそう"を日本語に訳します



SEKAIWOYAKUSU

世界の"おもしろそう"を日本語に

間違った定説を信じてしまうワケ

SPONSORED LINK

f:id:sekaiwoyakusu:20181002115324j:plain

「地球は球体である」や「現代社会に生きる人間の生活のせいで気候変動が起こっている」という事実を人びとに納得させるのは、なぜこんなに難しいのでしょうか。しかも、こういった考えを裏付ける膨大な証拠があるのにも関わらず・・・。

科学者たちは、人びとが明白な証拠に裏付けられた事実を信じない理由を見つけたかもしれません。その理由は、人びとの理解力が低いからという理由ではなく、その事実に対するフィードバックが大きな影響を及ぼしていることが分かりました。

最新の研究では、あなたの行動や発言に対して論理や理屈よりも大きな影響を与えるのは、周囲の人びとからの肯定的、もしくは否定的なフィードバックであることを示唆しています。そのため、同じ考えを持つ人びとのグループにいると、自身の考えや意見が強化されるわけです。

良いフィードバックを受けることで、私たちは実際よりも多くのことを知っていると思えるようになるのです。

言い換えれば、現在の考え方や意見が正しいものだと信じれば信じるほど、他の考え方や意見、もしくは自身の考えを否定する科学的データをも無視する可能性があるわけです。

カフィフォルニア大学バークレー校で心理学を学ぶ、Louis Marti氏は次のように語っています。

「何かについてよく知っていると思っていても、そうでないとしても、そのトピックをさらに詳しく調べるほどの興味がないというのが現実でしょう。その結果、そのトピックについて自身の理解度がどれだけ少ないかに気づかないのです。」

彼らの研究チームは、500人以上を対象に色のついた図形を見せる実験を行いました。それぞれの図形が出現したときに、参加者には「この形はダクシーですか?」と質問がスクリーンに表示されます。ちなみに、ダクシーという図形の名前は存在しません。これは、研究チームがこの実験のために作った架空の図形名です。

もちろん、実験の対象者はダクシーがどんな形であるかは分かりません。ランダムな図形と「これはダクシーですか?」という質問を表示し、実験の参加者に回答させると「不正解、これはダクシーではありません!」や「正解、これはダクシーではありません!」といったメッセージがスクリーンに表示されます。要するに回答者は、システムからフィードバックを受けることが出来るわけです。これと同時にスクリーンには、「ダクシーの意味が本当に分かっていますか?」という質問も表示されるようになっています。

この方法で研究チームは、フィードバックに関連する確実性を測ることができました。実験の結果、参加者の信頼感は全体的なパフォーマンスではなく、彼らの最後の4回目か5回目の回答の結果に大きく基づいていることが分かりました。

実験の様子は、下記のYouTubeで観ることが出来ます。

この実験を行った研究チームによると、この実験には私たちの”学習”に対する知識が関連しているそうです。つまり、学習するためには、学習者たちは自分がその時点で知っていることと、まだ知らないことの間にギャップがあることを認識する必要があるのです。もし、その間にギャップがあると思わなければ、新しい情報を受け入れることはできないでしょう。

研究チームは次のようにも語っています。

「実験の結果でもっとも興味をひいたのは、ダクシーという仮想の図形の名前に対して実験者の1〜19回目の回答には、連続して不正解という結果を表示し、最後の5回の回答には連続して正解という結果を表示すると、彼らはダクシーという名前の図形に対する知識について自信をみせたことです。彼らが注意を払っていたわけではなく、彼らはダクシーが何であるかについて学んでいたのです。しかし、実験の参加者たちは学習した内容の大部分を自身がどれだけダクシーについて知っているかという確実性を伝えるために利用しませんでした。」

この実験によって、個人が直近で受けた他者からのフィードバックは、科学的論拠に基づいた確固たる証拠よりも効果が強いことを示唆しており、この実験結果はより広い意味でも当てはまるかもしれません。例えば、何か新しいことを学ぶ過程や善悪の区別をつけようとするプロセスにおいてフィードバックは、明白な証拠よりも強い効果をもっているかもしれないということです。

このケースでは、実験の参加者たちは仮想の名前を持った図形がどれであるかを見極めようとしていますが、視覚的な情報が強化されているソーシャルメディアやニュースチャンネルを利用しているときもユーザーの脳では、実験と同様の認知プロセスが機能しています。

カルフォルニア大学バークレー校の心理学者であるCeleste Kiddley氏は次のように語っています。

「なんの根拠や証拠もない理論をもとに推論を行い、たまたまその推論が正しかったとしましょう。もし、これが数回続いたとしたら、その後は推論を行う際にそれを支える証拠や情報を集めようとはしなくなるでしょう。」

最新の研究によると、例えばあなたが「予防接種は有害である」という考えを信じていたとすると、その考えは明白な情報や研究結果に基づいて支えられているわけではなく、あなたがソーシャルメディアや周りにいる他者から見たり、聞いたりしたフィードバックに支えられている可能性が高いことを示唆しています。

同大学の研究者によると、学習とは時間をかけてより考え抜かれた観察や考察に基づいて行われることが理想的だとのことです。Louis Marti氏は、「もし、あなたの目標が真実に辿りつくということなのであれば、自身でその事柄が正しいか否かを判断する際に科学的なデータ、証拠、情報を集める理解することよりも、周りの人びとやソーシャルメディアから受けたフィードバックを論拠とするとしたら、それはあまり良い方法ではないです。」と語っています。

 

元記事:Scientists Say They've Found The Driver of False Beliefs, And It's Not a Lack of Intelligence